2006年02月19日

『レイクサイド』感想。

今日は文藝春秋・文春文庫:東野圭吾レイクサイド』の感想文。
ミステリのネタバレをばしばししているので御注意。
直木賞受賞後に出た文庫、という事で手に取ってみた。……うん、自分貧乏だからハードカヴァーはよっぽどの事がないと買わないんだよ。
でも帯の「日本中が注視する作家の最新刊」というのはちょっと違うんじゃないか? 判型が変わっただけの本を「最新刊」と呼ぶのは違和感がある。書き下ろし作品でこそ言うべきじゃないかな。

中学受験に備えての合宿というのが、受験戦争を適当にへらへらやり過ごした自分にはちょっと違和感がある。よって主人公に感情移入も比較的しやすい。元々平易な文章で書かれていて、すらすら読めるのは大きい。
夫の愛人を妻が殺すのは、ミステリで腐るほど見てきた話だ。しかし本作では、その犯罪を受験合宿参加者全員で隠そうとする点が奇妙だ。勿論主人公もその疑問が真相を追求する動機となっている。

主人公が辿り着いた真相は、納得できると共にとても苦しい。
子どもたちの誰か、としか言えない大人。うちの子に限ってと思いつつ、完全にはそう信じる事ができない。自分たちが異常だから、その歪みが子供に出ているのかもしれない……だから何もなかった事にしたがる。
犯罪の隠蔽を責めるのは簡単だが、こう思うに至る親の心境を責めるのは自分には難しい。もしうちの子が、と一度でも考えればそこから逃げられないだろう。何かを完全に信じるほど、自分は強くない。
バーベキューの際にそれぞれの親子が交わした会話が、ここで効いてくる。受験戦争に立ち向かう親の認識を移植された子どもを見てしまうと、隠蔽を選んだ大人たちの選択に、どうしようもない説得力を感じてしまうのだ。

主人公が最後に下した決断は、そう考えれば至極当然の物だ。
ただ、解説にもあったとおり、真相を公表するという選択もおかしくない。こちらは我が子を信じる選択でもあるからだ。

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